田中敦子(1932-2005)は、金山明の助言を受けて抽象表現へと進み、コラージュによる≪カレンダー≫を制作し始めました。このときから、繊細さと力強さが共存する独自の感性を発揮します。
その後、金山と共に、吉原治良の指導の下に結成された前衛団体『具体』に参加しました。
20個のベルが順に鳴り響く≪作品(ベル)≫(1955年)。9色の合成エナメル塗料で塗り分けられた管球約100個と電球約80個からなる≪電気服≫(1956年)。そのほか、パフォーマンスやインスタレーションをとりいれた彼女の表現は『具体』のなかでも突出した異彩を放ち、注目を集めました。この時期の彼女の作品は、音や電気の明滅、あるいは時間といった非物質的な素材を、従来の美術表現にとらわれず、その存在のあり様を最も際だたせる方法で抽出しています。
さらに彼女はこうした試みを絵画で表現すべく、電気服の電球と配線に対応する円と線から成り立つおびただしいヴァリエーションの絵画群を生涯描き続けます。彼女の歩みは、あるときは極端にラディカルに展開し、あるときは淡々とした繰り返しのように見えますが、すべての作品がつながり合った新たな実験でした。
近年、『具体』をはじめ、日本の戦後現代美術への再評価の気運が高まってきました。田中敦子は没後の『Documenta12』 (2007年)でも大きく特集されるなど、とりわけ重要視されています。
本展は、作家自身の監修のもとに再制作された≪作品(ベル)≫や≪電気服≫をはじめとした代表作約100点で構成。イギリス、スペインを巡回した凱旋展でもあります。松井紫朗、河合政之、上地由衣の新作など、2011年と田中敦子をつなぐ作品も展示する本展で、革新性を模索し続けた田中の歩みを辿ってください。



■開催期間:2012年2月4日(土)~2012年5月6日(日)
■会場:東京都現代美術館
■ホームページ:http://www.mot-art-museum.jp/
■住所:東京都江東区三好4-1-1
■お問合せ先:03-5777-8600