「塔」に登った、楽しい思い出。それを永く記憧にとどめるため、人々はさまざまな形で残してきました。
画家は絵に描き、作家は小説に著し、記者は記事として伝え、写真が撮られ、遠方の友にはその感動が絵葉書で届けられました。こうして残された記憶の断片が積み重なり、それぞれの塔のものがたりとなります。
2012年春。東京に新しい塔が誕生します。隅田川の東岸、押上の地に、東京スカイツリーが完成するのです。東京という都市に、600メートルを優に超える、新たなランドマークが誕生する記念の年といえるでしょう。
都市に塔があるとき、ひとは遠くからその姿を眺め、近寄って足元から見上げ、登り、塔上から風景を見晴らし、そしてその記憶を思い出として残します。私たちはどのように新たな塔の記憶を残し、新たなものがたりを織り成すのでしょうか――。
本展覧会では、「眺める」「見上げる」「登る」「見晴らす」「思い出に残す」をキーワードとして、人々が記憶を積み重ねながら織り成してきた「都市と塔のものがたり」をご紹介します。塔の起源としてのバべルの塔と仏塔からはじまり、19世紀末から20世紀にかけての3つの都市=パリ・東京・大阪に生まれた、エッフェル塔、凌雲閣、初代通天閣、さらに東京タワーと二代通天閣へと続きます。
今回、オルセー美術館をはじめ、パリから貴重なエッフェル塔関係資料48点が出展。さらに、喜多川周之コレクションなど、江戸東京博物館の館蔵資料を中心に約380件も展示されます。「これまで、さまざまな塔とわたしたちがどのように関わってきたのか」という記憶を振り返ることで、これから新しく生まれる塔の未来を考える機会となれば幸いです。

ジョルジュ・ギャレン≪エッフェル塔のサーチライト≫ 1889年(明治22年) オルセー美術館蔵 Gift from Ms Solange Granet, Mrs Bernard Granet and her children, descendants of Gustave Eiffel, 1981 ©RMN (Musée d'Orsay) / René-Gabriel Ojéda distributed by AMF-OADIS

≪浅草公園陵雲閣之図≫坂井金三郎発行 明治24年(1891年)1月 大判錦絵 江戸東京博物館蔵 ※展示期間/2月21日~3月25日

≪有宝地眺望閣之図≫宣建社発行 明治21年(1888年) 木版 江戸東京博物館蔵 ※展示期間/2月21日~3月25日
■開催期間:2012年2月21日(火)~2012年5月6日(日)
■会場:東京都江戸東京博物館
■ホームページ:http://tower-ten.jp/
■住所:東京都墨田区横網1-4-1
■お問合せ先:03-3626-9974