現在、その活動が最も注目される画家の一人、松井冬子(まつい・ふゆこ、1974-)。その、公立美術館における初めての大規模個展を開催します。
横浜美術館では、2006年に『日本×画展 しょく発する6人』展において、日本の古典絵画が受け継いできた美意識や主題、様式、技法などのうち、近代になって「日本画」の概念が成立する過程で捨て去られたものに、新たな価値や創作の手がかりを見出す若手作家として、松井をとり上げて以来の展示となります。
松井は、油彩画を学んだのち、日本の古典絵画の技法に、表現上の魅力と可能性を見いだし、東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻に入学。日本絵画の古典技法の探求を通じて、確かな画技を身に付けています。
同大の学部卒業制作≪世界中の子と友達になれる≫は、芸術表現が呼び起こす精神的肉体的な「痛み」を始点とした作品です。以来、恐怖、狂気、ナルシシズム、性、生と死などをテーマに、挑発的とも言える作品を発表し続けています。
本展では、彼女の代表的な本画の作品に加え、試行錯誤の軌跡を伝える下絵、厳密に描き込んだデッサンを展示します。さらに新作を加え、計約100点によって松井冬子の全貌をご覧いただきます。
また本展会期中、松井が初めてアートディレクションを手がける映像作品を公開する予定です(2012年3月)。松井冬子の美意識が、映像という新たな表現領域においてどう発揮されるか――。日本において初公開となる作品の≪喪の寄り道≫や≪体の捨て場所≫などとあわせて、今後が注目される彼女の創作活動の方向性に是非注目してください。

≪世界中の子と友達になれる≫ 2002年(平成14年) 絹本着色、裏箔、紙 181.8×227.8cm 作家蔵(横浜美術館寄託)

≪夜盲症≫ 2005年(平成17年) 絹本着色、軸 138.4×49.5cm 成山明光氏蔵

松井冬子 撮影:中川真人
■開催期間:2011年12月17日(土)~2012年3月18日(日)
■会場:横浜美術館
■ホームページ:http://www.yaf.or.jp/yma/
■住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
■お問合せ先:045-221-0300