野田裕示(のだ・ひろじ/1952年、和歌山県生まれ)は、多摩美術大学を卒業した翌1977年には、南画廊の最年少作家として個展が開催されるなど、早くから才能を認められた画家です。
1970年代後半から現在に至るまで精力的に作品を発表していますが、1995年の和歌山県立近代美術館での個展開催以来、創作活動を概観するような展覧会は開催されていません。本展は、その後の展開を含めた、初期から現在に至る30年間の活動を展望する、東京では初の個展です。
野田の絵画の本質を問う作業は、80年代初頭より一種のレリーフ作品ともいえる箱状の造形によって始まりました。続く80年代半ばにはそれが発展。支持体を袋状に覆う独自の絵画スタイルが登場します。
さらに90年代は、カンヴァスを縫い合わせ、折り返し重ねる手法によって深化が図られます。しかし2000年を迎える頃には、下地は徐々に平滑になり、画面は自由なストロークによる有機的な形象に占められるようになります。そして近年の、特定のテーマによる連作や組み合わせを意識した作品は、展示の有り様を重視する傾向へと進んでいます。
本展は、野田の30年に及ぶ取り組みを、進化を重ねるなかで生まれてきた約140点の作品によって概観します。そしてその試みが、日本のアートシーンでどのような成果をもたらしたのかを検証するものです。また、彫刻家・岡本敦生とのコラボレーションによる立体作品17点も特別展示されます。
野田が自身の造形思考をどのように深め、作品化してきたか――。それを確認し、一人の優れた作家の足跡を辿ることに留まらず、今後の絵画の行く末に思いを馳せていただく機会となれば幸いです。

≪WORK 1536≫2003年 181.8×259.1cm

≪WORK 214≫1984年 166.0×116.0×10.0cm 和歌山県立近代美術館蔵

≪WORK 299≫1987年 227.3×181.8cm 和歌山県立近代美術館蔵
■開催期間:2012年1月18日(水)~2012年4月2日(月)
■会場:国立新美術館企画展示室2E
■ホームページ:http://www.nact.jp/
■住所:東京都港区六本木7-22-2
■お問合せ先:03-5777-8600