現在、地球上にある植物の多くが、子孫を残す手段として種子をつくります。
野菜、果物、穀類、あるいは街路樹や公園の草木――。日常生活で目にする風景のなかで、私たちは当たり前に種子の姿を見て、さほど意識することもなく触れています。
しかし種子は、食べられる果実をまとうもの以外にも、バラエティに富んだ形状をしています。タンポポのように綿毛のあるもの。ひっつきむしのようにくっつくもの。ヤシのように繊維質で水に浮かび漂流するものなど。それらは、どうしてこのような姿をしているのでしょうか? 本展では、身近なものから、驚くような身なりを持つものまで、世界中の種子のかたちを、機能との関わりから考えます。
機能面から考えた場合、植物は広く多様な環境に生き残るため、自身では動けないかわりに、種子のかたちにさまざまな戦略を講じています。そして、風、水、火、動物、自力といった自然の力を利用して、次世代を残すという大きな役割とともに飛び立つのです。
本展会場では、国内外から集められた種子100点以上の実物標本を、散布方法ごとにコーナーを設けてご覧いただきます。風に乗って旅立つ、アルソミトラやフタバガキ。マングローブの森から水の流れに乗る、オヒルギやメヒルギ。熱の力で散布される、山火事の多いオーストラリアなどのハケアやバンクシア。セイシェル諸島にしか生息しない、世界最大にして、希少な自力散布の種子であるフタゴヤシ――。細部に寄った写真や飛行映像などで、それらの生態とデザインの見事な融合をご紹介します。
ときにつつましく、ときにしたたかに、次世代を残す旅に出る種子たち。その工夫に満ちたかたちを、存分にお楽しみください。

ツノゴマ 所蔵:大阪市立自然史博物館 撮影:佐治康生

スカフィウム 所蔵:大阪市立自然史博物館 撮影:佐治康生

トウビシ 所蔵:兵庫県立人と自然の博物館 撮影:佐治康生
■開催期間:2011年12月1日(木)~2012年2月25日(土)
■会場:INAXギャラリー1
■ホームページ:http://inax.lixil.co.jp/culture/
■住所:東京都中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA 2 階
■お問合せ先:03-5250-6530