日本の近代写真の成立と展開を語る上で欠かすことのできない、新興写真の旗手として知られる堀野正雄(1907-1998)。
1930年代を中心に、舞台、ポートレイト、ファッション、広告、海外取材など、幅広いジャンルでその才能を発揮した堀野の展覧会を、この度開催します。彼の個展が行われるのは、1937年(昭和12年)以来、実に75年ぶりのこと。堀野初のレトロスペクティブ(回顧)展になります。
その強烈なまでの個性に満ちあふれた作風により、写真家としての堀野の名前は知られています。ところが、実際の活動の軌跡と評価、位置づけは不十分なものと言わざるを得ませんでした。しかし近年、若い世代の写真史研究者はもとより、デザイン史やメディア史の研究者が強い関心を寄せ、その成果も見え始めています。
本展は、「幻の写真家」ともいうべき堀野正雄の仕事の全体像を明らかにすることによって、1930 年代を中心とする写真史に新たなヴィジョンを構築する展覧会です。
1920年代の築地小劇場を中心とする舞台写真やポートレイト、舞踊家の写真などから、写真集『カメラ・眼×鉄・構成』、『犯罪科学』誌を中心とするグラフ・モンタージュ、『NIPPON』や『主婦の友』、『婦人画報』などに発表した報道写真に至るまで――。戦争によって多くの作品が焼失したなか、遺族の全面協力により、貴重なオリジナル・プリント約100点を初公開します。
さらに多彩な関係資料なども併せ、全200点以上を展示。独自の感性で「近代写真とは何か」を突きつめた堀野の軌跡に迫ります。日本写真史に重要な位置を占める堀野の全貌に迫る本展は、新しい世代にも注目されるモダニズムの感覚をも十二分に堪能できる機会になるでしょう。

題不詳(和服を着た女性)1933年

女学生の行進「ガスマスク行進、東京」より、1936~39年

風 1936年
■開催期間:2012年3月6日(火)~2012年5月6日(日)
■会場:東京都写真美術館
■ホームページ:http://www.syabi.com
■住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
■お問合せ先:03-3280-0099