銀は、古来より、その眩い輝きを「月光」にも喩えられてきました。またアジアにおいて、銀は普遍的な素材として、また強い反射が邪悪なものをはね返す金属として尊ばれ、装身具に多用されています。
近・現代のアジアの代表的な装身具270点を展覧する本展は、さまざまな歴史や民族が交錯するアジア大陸ならではの、地域の比較や特徴などを披露しながらその魅力に迫ります。
数百の民族が暮らすアジアでは、自身を飾ることだけが装身具の目的ではありません。民族のアイデンティティを示す重要なアイテムとしても、人々の暮らしのなかで受け継がれてきました。
それ故に、存在感のある大胆な造形や手の込んだ細工など、ヨーロッパよりも豊富な種類の、固有なデザインが存在します。また装身具に込められたさまざまな思いをひも解くと、生命と直結した聖なるものとしての意義や身体装飾への情熱までも知ることができます。
本展は、アジア全域の地図をガイドに、東アジア・東南アジア・中央アジア・南アジア・西アジアの5エリアを巡るような展示になっています。あらゆる体の部分に応じた各地域の装身具を個々に堪能していただきながら、銀細工の細かさや迫力ある造形美を間近に感じていただけるでしょう。さらに、当時の民族衣装と合わせた装飾法や独特の着用法など、「どのように身に付けられるのか」が分かる貴重な古写真と現代写真をパネルで紹介します。
いまや生活様式の変化と共に姿を消しつつある伝統的な民族装身具ですが、失われる地域の文化を今に伝える民族の誇りであり、部族の証として、普遍的な存在といえます。力強く、生命力溢れる銀の造形美を、ぜひじっくりご鑑賞ください。

≪「アシク」または「ゴジャ」と呼ばれる背飾り≫ 中央アジア/トルクメニスタン W230×H105撮影:熊谷順 所蔵:日本宝飾クラフト学院

≪「カンジャール」と呼ばれる儀礼用短刀≫ 西アジア/オマーン W280×H220 撮影:熊谷順 所蔵:日本宝飾クラフト学院

≪「ガウ」と呼ばれるお守りペンダント≫東アジア/チベット W100×D30×H90 撮影:熊谷順 所蔵:日本宝飾クラフト学院
■開催期間:2012年3月9日(金)~2012年5月24日(木)
■会場:INAXギャラリー名古屋
■ホームページ:http://inax.lixil.co.jp/culture/
■住所:愛知県名古屋市中区錦1-16-20 LIXIL名古屋ショールーム B1
■お問合せ先:052-201-1716